俺の通っているのは私立松ヶ丘高校。中学の成績が中の中だった俺が入れるくらいだから、そんなに偏差値は高くない。ここを選んだのは自由な校風が好きだったからだ。

それは前の理事長が、生徒の希望は出来るだけ許可してきたからだと聞いた。

髪は白く、サンタクロースのような髭をたくわえた前理事長は、生徒がどんな提案をしても応援してくれるような人だった。俺が一年生の時に『長野電鉄屋代線・断固存続研究部』を作りたいと言った時も「やりたいなら好きなだけやりなさい」と、優しく笑って認めてくれたのだ。

そんな理事長だったから、変な部が他にも山ほどある。

い つも部室でケーキばかり食べている『軽いバンド研究部』、友達を作ろうとネットゲームばかりをしている『仲良くなる方法研究部』、何をやっているんだかわ からない『よい仕事研究部』、安く弁当を買うためなら実力行使も止むを得ないと考えている『格安弁当争奪研究部』を始め、訳のわからない部活が大量に発生 した。

そして、その総数は現在約300。

ちょっと企画を思いついたらすぐに出すラノベじゃあるまいし……。

一学年120名、三学年合わせて全校で360名程度しかいないわけだから、これは一人一人が何かの部を持っていると言っても過言ではない。そうなると一つの部に所属する人数はどんどん減っていき、最近ではどの部も部員一名となりほとんどの奴が部長になっている。

しかし、別に生徒全員が部活に燃えている訳ではない。

ほとんどの奴は、研究部になるともらえる年間5万円の活動費が目当てなのだ。

俺もそんな活動費をあてにして、長野電鉄屋代線・断固存続研究部を起こした。

それこそ「どんな部だよ!?」と突っ込まれるだろうから、ここで我が部の活動を説明しておく。

長野県の北部、長野市を中心に走る長野電鉄という私鉄がある。千曲川に沿って走る屋代線は長野電鉄の支線で、長野県千曲市の屋代駅から須坂市の須坂駅までの24・4キロを結ぶ。

沿線にはあの武田信玄と上杉謙信の戦いで有名な川中島や第二次世界大戦時に作られた松代大本営の巨大な防空壕がある、とても素晴らしい路線だった。

だったとまことに残念な過去形なのは、ここが近年廃線となってしまったからだ。部を作った一年生の時には屋代線が存続する可能性があったので、俺は毎週のように長野県まで出かけて、一日乗車券を買い列車に乗り廃線反対運動に身をささげてきた。

これが我が部の主な活動だ。そんな崇高な部活を続けてきたのにも関わらず、廃線となってしまった訳だ。廃線になったらもう部活は出来ないだろう?

なんて思うかもしれないが……俺は声を大にして言いたい。

まだ、屋代線は死んでいない!

廃線となった現在も地元議会では残ったレールを使って、LRTと呼ばれる次世代型路面電車を走らせようという計画がある。

そうなのだ! 俺、日高優斗ひだかゆうとがあきらめない限り、屋代線は「断固存続」出来るのだ!

なぜここまで俺が屋代線の存続にこだわるかと言うとだな――。

「何、そんな所で手をあげてるの?」

「へえっ?」

気がつけば……既に午前中の行事は全て終了していた。

数名だけ残っている教室で、俺は一番後ろの席で右拳を恥ずかしげもなく高く掲げていた。

照れながらゆっくりと手をおろす俺を、真央がトロンした目で見つめる。

そんな目で見ているが別に真央は眠たい訳でも俺に気がある訳でもなく、こいつは普段からこんな目で男子みんなを見ている。

……それが勘違いを起こさせ、トラブルを生む。

「ゆーくん。どうしちゃったの?」

真央は俺とは家が隣同士だから、小学校も中学校も同じだった。

だから、学校では真央だけが俺のことを「ゆーくん」と呼ぶ。

「それより何だよ、真央」

真央は前の椅子に逆向きにまたがるようにして座り、背もたれに肘をついて頭をのせる。

「よっと」

そうすると腕の間に凝縮された大きな胸がグッと前に突き出された。

中学の時にはそういうことは気にしていなかったが、高校に入ってから真央は突然急成長。

胸はびっくりするくらい大きくなり、制服が小さく見えるようになった。

……うちの女子の制服のスカートはそんなに短くはなかったと思うのだが?

しかも基本大らかな性格の真央は、服の着こなしが超ラフ。

「ちゃんとボタンを留めろって……。それにうちの制服にはリボンがあったろう?」

「だって、苦しくなっちゃうんだも~ん」

真央はシャツの胸元のすき間に人差し指と中指をスルリと差し入れ広げて見せる。

もちろん、そんな無防備なことをすれば水色のブラがチラチラ見える。

「やっ、やめろって!」

とっさにシャツを閉じるように左右の襟元を掴んだ。

「なんで? どうしてぇ?」

真央はグッと顔を近づけてくる。

「どうしてもなの! 真央のそういう所が色々なトラブルを生んでいるんだからっ!」

真央は俺にだけこんな態度をとっている訳じゃない。

誰とでもすぐに打ち解けるし、会ってすぐに肩を組んだり手をつないだりするスキンシップもまったく嫌がらない奴だったので、小さい頃から友達の多い奴だった。

男も女もいっしょくたでワイワイやっていた小学生までならそれは問題にならないと思うが、爆乳美人の高三が露出多めにそんなことをしたらどうなるかはわかってもらえると思う。

 

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