思いがけない言葉に、ぽかん、と口を開きっぱなしにする流歌。
 だが、蒼太は今まで見せなかった顔を上げて見せる。決して整っていないわけではないが、どこか暗く、冴えない雰囲気を持つ相貌を。
 その顔についている目を、きょろきょろと疑わしげに周囲に向けながら、うめいた。
「あ、それともドッキリ企画か? 看板持っている奴が、その辺に潜伏してるのか? だが、長年周囲の目線を恐れて、常に警戒し続けてきたオレの目はごまかせないからな!」
 何という、卑屈なリアクション。
 その言動に、流歌は彼の顔をしみじみと見つめていたが、次の瞬間。
「こ、この、大馬鹿ものぉっ!」
「うぐぁっ?」
 渾身の右ストレートをたたき込み、吹っ飛ぶ蒼太をさらに十メートルほど地面の上で転がした。
 拳に力を入れたまま、怒鳴り声を上げる。
「お前、乙女の告白を何と心得ているんだ! 私はいい! だが、ヒメ美のような優しい娘が悪戯で告白するわけないだろ!」
 だが、蒼太はよろよろと立ち上がると、
「だ、だって……こういうことって、昔から何か裏があったじゃないかぁ」
 うめき声を上げた。どこか、泣きそうな顔で。
 確かに蒼太は小学生時代、クラスメートからからかわれる対象であり、一度悪戯で告白されたこともある。相手はクラスでも飛び抜けて可愛いと評判の女の子で、性格の悪さもクラスで飛び抜けていた。仲間を集めて小金を賭け――後は大体想像がつくだろう。
 だからって。高校生にもなってそんな悪ふざけで盛り上がるほど、年頃の乙女は子供ではない。少なくとも流歌はそうだし、ヒメ美も同様だと信じている。
 だから、流歌は蒼太の言葉に、腹が立ったのだ。
 しかし、彼は不信を表情に表したまま、ぼそりと言葉を続ける。
「それに、オレみたいな非モテで、普通の女性からは常日頃ゴミ虫を見るような目で見られる男が、二人もの女から告白を受けるはずがない。よほどのゲテモノ好きでなければ」
「お前、自分に告白してきた相手に向かって何てことを……いやいや、そのだな。確かにお前はモテるとは言い難いが、それでも二人くらいなら可能性なくはないだろ。それを罰ゲームとかドッキリとか、疑うなんて」
 何で自分で自分の告白のフォローをしなくてはならないのだ、と、釈然としない気持ちを抱きながら、流歌が言った。
 だが、蒼太はそんな彼女を半眼で見ると、

「二人じゃなくて、四人だし」
「……え? それってどういう……」
「だから、四人目なんだよ。お前で。今日のうちに、オレに告白してきた奴」

その言葉に、流歌は心の中で「はぁああっ?」と驚愕の声を上げた。
 ありえない。絶対にそんなことありえない。
(何だ、それ。付き合いの長い私やヒメ美はともかく、他からも告白された……? こんな冴えない顔つきをしていて、どこか情けないオーラ出している蒼太が? 天変地異でもない限り、そんなの無理だ!)
 自分が告白した相手を基準に考えるにはいささか失礼な感想を、彼女は抱くのであった。

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