宣伝はパン屋の張り紙一枚だけだったが、『カーラの修理屋』の評判は子どもからその親へと、瞬く間に広がっていった。一件30円から1万円と、その金額はケースバイケースだった。カーラの修理は何においても手際がよく、いつしか『ドイツの修理魔女』という仇名がつくほどだった。

「えぇ、っとこれ終ったら、今度は下山、アンダーマウンテンさんのところね」
 今ではすっかり、レイクがカーラのマネージャーのような立場になっており、スケジュール管理を任されていた。これまで、距離を置いて接していたが、ナミに言われるまま、無理やり組まされるうちにカーラの色んな表情――といっても普段はほとんどポーカーフェイス――が見え、レイクも徐々にその考えを改めるようになっていたのだ。
「その英語交じりの変な日本語、なんとかしなさい! で、アンダー……じゃない、下山さんは何を直して欲しいの?」
「テレフォンの音が小さいんだって」
「そんなもの、説明書を見て自分で直しなさい!」
「まあまあ、カーラさん、落ち着いて。とにかく行ってみましょう」
 ここでもハルミはカーラのなだめ役、仲裁役だった。

言いだしっぺのナミはといえば、時折どこかに出かけ、姿を見せないことがあった。どこに行っていたのか尋ねられても、『秘密』としか答えない。

カーラの評判は町のみならず、プテリギオン追跡とミイラ殺人捜査にまるで進展がなく、停滞気味な国連軍基地にまで届いていた。
「なんだ、やっぱりあれはガールスカウトのお嬢ちゃんだったのか?」
 オイルライターをしげしげ眺め、チャールズが呟いた。
「一応、派遣部隊の中隊長と聞いてますが」
 ヒューゴは、腕時計を眺めながら答えた。
 二人とも、カーラの評判を聞いて、ライターと時計の修理を依頼したのだ。
「ま、手先の器用さだけは認めるが……。お嬢ちゃんはおとなしく修理屋でもやってればいい。……できることなら、戦いには巻き込ませたくない、我々だけで十分だ」
 そう言ってチャールズはボッとライターに火をつける。
「ところで、あの例の……あれはどうなった?」
「卵、ですか。いまのところ厳重に保管されており、他国の動きもありません。今のところは、ですが」
 うん、とチャールズが頷く。
「スパイもいない。探し物も見つからない……まことにもって平和な日常だな」
 皮肉っぽくチャールズがニヤリ、とした。

明後日から夏休み、というそんな日の昼休みの教室……。
「うわぁああ!」
 カネミツが、突然大声を上げた。
 教室のみんなが一斉にカネミツを見る。カネミツも誰彼構わず、携帯を見せて回っている。
 どうやらワンセグを視聴しながら昼食をとっていたようだ。
「おおかた、ごひいきのアイドルの熱愛発覚とかじゃないの?」
 大騒ぎしているカネミツを遠目に見ながら、ナミは、カーラ、レイクと弁当を広げていた。
「カーラのお弁当にはウィンナーがないのね。ジャーマンなのに」
「レイクはホットドッグじゃないの? それともアメリカンはスペアリブかしら?」
 その頃になると、クールな表情ながらもカーラも冗談を返せるようになっていた。

「見ろよ見ろって、能美!」
 カネミツがナミたちの席に携帯をぬっと差し出した。
「何よ、一体?」
「いいから見てみろ、特に能美」
 携帯に映っているのはお昼のワイドショーらしく、神妙な顔つきのキャスターと、ゲストのタレントの姿しかない。みんな黙りこくって、カメラ側のモニターを凝視している。一見して、放送事故のような異様な雰囲気だけはナミにも伝わった。
「これ……何があったの? 事故?」
「もうすぐ、もう一回やるよ」

 カネミツがそういうと、画面が、人工的に作られたビーチの映像に切り替わった。
 背景には観光名所としても有名な、都心部へと伸びる巨大な吊り橋が、画面奥まで伸びている。
 東京の沿岸部にあるテレビ局の近くだ、とナミは思った。
 よくこの周辺でバラエティ番組のロケをしており、ナミも見たことがあったからだ。
 リポーターがしきりに何かを言っており、その後ろでは野次馬や、それを整理する警察の姿が見える。ただならぬ事態が起こったことだけは把握できた。
 ただ教室の喧騒の中で、声がよく聞き取れない。

「まさか……プテリギオン?」

----つづく----

一見平和な学園生活。しかし確実に奴らは水面下に忍び寄ってきていた…
 ナミ達は、街の平和を守るため、ついにアレを持ちだすのであった…
 「バカと戦車で守ってみる!」第3話

「海を見つめる少女、もう一人。そして戦車(後編)」

レイク :ちょっと、なんてとこでハーフタイムですかっ><
 ハルミ :わたし出番少ないですね…
 カーラ :あれは、まさか自衛隊の!
 ナミ   :ふっふ~ん、すごいでしょ~(ドヤ顔

 

 

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