バカと戦車で守ってみる!

著者/馬場 卓也

第4話 【海辺の戦車、もう一台(前編)】

タタタン、タタタタン!

国連軍兵士の放つ自動小銃の小気味よい銃声が夏の昼下がりの、じりじりと太陽の照りつける中に鳴り響いた。

それより30分前。

『大海原海水浴場に怪生物出現』

その一報を受け、国連軍が出動した時には、先に到着していた地元警察がすでに交戦中であった。

巨大なフナムシ、といった様子のそれらは、深いグレーの甲羅を太陽の光にギラギラと反射させながら様子を伺うように、じりじりと警官隊に迫っていた。

「まるで、銀玉鉄砲だ……」
 と、1人の警官が発砲しつつ呟いた。
 怪生物群は、警察官の標準装備である38口径の拳銃ぐらいでは装甲を撃ち抜く事も出来ず、放水や発炎筒で足止めするぐらいしか手のくだしようがなかったのだ。

早朝から海を楽しもうとやってきた若者たちが数人、奴らの餌食になっており、怪生物の足元には、へし折れたサーフボードの破片が散らばり、所々にどす黒い血だまりができていた。

アンテナのような長い触角を前後に揺らし、硬い甲羅の下に無数の足を蠢かせ、連動するように鉈のような前脚を揺らし、キリキリと耳に障る不快な音を立てながら、それは近付いてくる。

あの時、漫才師の背中にかぶりついていたのよりも大きく、人間の子供ぐらいの大きさだ。

キリキリキリキリ……。

装甲に覆われた頭部の下から、巨大な鎌のような一対の顎がちらちらと見える。

タタタタン、タタタタン……。
 警官隊と入れ替わった軍の自動小銃の一斉射撃に、怪生物の装甲がはじけ、もんどりうちながら仰向けに倒れていく。
 歩兵たちは、勝利を確信……したかったが、怪生物は波間から次々と姿を見せ、かなりの数になってきていた。。

「数が多い、多すぎるぞ!」
「増援頼む、大至急だ!」
 通信機を手にした歩兵が叫ぶ。
「敵の数? 多すぎて数え切れない! 怪物が七分に砂浜が三分だ! 繰り返す……怪物が七分に砂浜が三分だ! 急いでくれ!」
 じりじりと後退する歩兵部隊に焦りの色が見えた。でも、ここでくじけてしまったら、怪生物たちの思うがままだ。

ラタタタタタタタタタタ、ラタタタタタタタタ……。

その時、プロペラ音を響かせ、歩兵たちの頭上に、AH‐64D戦闘ヘリがゆっくりと姿を見せた。

「きた!」
「一旦引くぞ!」
 心強い援軍の登場に、歩兵たちの列が、それこそ波のようにざわわと、後退する。
 それと入れ替わるように

パタタタタタタタタタタン、パタタタタタタタタタン!

ヘリに搭載した30ミリチェーンガンが唸りをあげた。
 その銃身から止まることのない砲火が発せられ、群れを容赦なく、まるで草刈機で雑草を薙いでいくように、一掃していった。
 砂浜が盛り上がり、白いカーテンのような砂煙を巻き起こすと、怪生物の群れが大きくはじけ、緑色の体液をぶちまけながら次々に吹き飛んでいく。
「やった!」
「すげーなアパッチ……」
「まるで戦場だ……本当に、ここ、日本なのか?」
 歩兵たちが歓喜の声を上げる中、自衛隊から編入された一人が、震える手で、ぎゅっと小銃を握り締め、呟いた。
 彼にとって、いやここにいた歩兵のほとんどが、はじめての実戦だったのだ。

怪生物出現を受けてその日の午後、政府の決議によって太平洋の船舶による航行はおろか、沿岸部での遊泳、及び立ち入りが禁じられ、テレビでも繰り返し報じられた。

海水浴場では閑古鳥と、『海の家』の経営者がないた。

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