「ひゃ、いよいよ本格的になったなあ」
 ロクヒト君の砲塔に腰掛け、ナミは昨日と同じように海岸を眺めていた。
 海岸はすっかりと立ち入り禁止になっていたが、先日ロクヒト君が激突した防獣壁の穴はそのままになっていた。ナミとハルミはそこから入ってきたのだ。
 戦車活動が休止中の今、二人は卵の様子を見にやってきていた。
「……卵の方、うんともすんとも言いませんね。ひょっとして漂着の際の衝撃でダメになったのかも」
 ハッチから、ハルミが顔を覗かせる。
「そう、かもね。でももうちょっと様子を見ようよ」
「はい。……それにしても暑いですね。っち!」
 ハルミは車体に触れた手を思わず、引っ込めた。

ただでさえ蒸し風呂のように暑い戦車内に、太陽の光がじりじりと照りつけ、さらに温度を上げていく。ここなら、卵が孵化するに十分な温度が保てるのではないか、とナミは考えたのだ。

「ロクヒト君のボディーで目玉焼きができそうですね」
「それどころか、バーベキューでもできそうよ」
「そんなことしたら、カーラさんが怒りますよ。『あなたたち、ロクヒト君をホットプレートか何かと勘違いしてない?』とか言って」
 と、メガネを外し腕を組みながら物真似をするハルミに、ナミはぷっと吹き出してしまった。
「うまい、今の物真似、よく似てる、も1回やってよ」
「ダメですよ。それこそカーラさんに叱られますから」
「やって、やってよぉ」
「だめですって!」

そんな二人のやり取りを、チャールズは双眼鏡で見ていた。覗き趣味ではなく、海を監視している最中、たまたまナミたちの様子が目に入ったからだ。
「……あれがタンクガールズか? ポンコツの前で、ショートカットで胸の大きいのと、胸の小さいメガネが、はしゃいでいるぞ。ティーンだな」
「胸が基準ですか。って、民間人がいるんですか?」
「ほら、見てみろ」
 チャールズから双眼鏡を受け取り、ヒューゴが覗く。

海岸から離れた入り江の近くで、波を蹴立てて走り回る二人と、ロクヒト君の姿が確認できた。

「……本当ですね。というかバリケードをどうやってくぐったんだ?」
「海で遊ぶのは結構だが……ここの防御網はザルか? あれがもし、ムシケラどもだったら、とっくに町の人間はエジプトのようにミイラになっているぞ」
「早速、防獣壁の強化に当たります。それと二人には」
「いいや……その必要はない。あの二人に危険がないか、かくれんぼの上手い見張りをつけてやれ。追い返すのも可哀そうだろ。今日だけ、特別だぞ。それに、デカブツもムシも当分来そうにないからな」
「はっ。……それにしても」
「なんだ?」
「……お優しいんですね、将軍」
「おいおい、今の今まで知らなかったのか?」
 肩をすくめ、チャールズはおどけるように見せた。

ヒューゴの指示で、バリケードは強固さを増し、防獣壁の上には監視所が設置され、夜になると刑務所のごとくサーチライトが真昼のように周辺を照らし、いつ侵入者が来ても大丈夫なように、万全な体勢が整えられていた。

闇を切り裂くようにサーチライトが海を、海岸を照らす中、ぼうっと浮かび上がるロクヒト君の側を人影が動いた。

頭の先から足元まで黒装束に包まれたその人影は、昼間のナミたちのように、いまだ修復されていない防獣壁の穴へ向かって走った。
「……はい、そこでフリーズして」
 その声に、影は立ち止まり、前を見た。穴から顔を出したのは、レイクだ。
「ちょっとおめかしして基地をゴーしたから、何かと思ったら……やっぱりあなた」
 影は抱えていた卵を足元にそっと置き、覆面をとった。
「やっぱりそうだったの、カーラ」
「つけてたのね?」
「そう。基地で偶然見かけたのよ、あなたを。それに昨日の積極的な態度、それとジョークと笑顔。それがどうにもフェイクっぽく見えてね。それで、それをどうするの?」
 レイクの視線が、カーラの足元に移る。
「見てるところはきちんと見てるのね。悪いけど……あなたの想像通りよ」
 さっとカーラが腰を落とし、身構える。
「やっぱりあなたがスパイだったの?」
「……最初は別の目的だったわ。でもこんなもの見た以上……」
 カーラは体を半身に構え、右の手刀をレイクに向ける。
「さすがコマンドを率いてるってだけはあるわね。じゃあ」
 レイクが、すっと木製のバットを取り出し、剣道のように正眼に構えた。
「わたしはアマチュアだから、ハンデつけさせてね。さあ、カーラ。これで頭をフルスイングされたくなかったら、エッグを元の場所に。いっそエッグをブレイクしちゃう?」
 カーラは首を横に振った。
「あなただって、騒ぎに紛れてこれを壊すつもりだったんじゃないの? ナミに内緒で」
「そんな事ナッシングよ! ……少しあるかもだけど」
「じゃあ、黙って私を見逃して。もう、あなたたちと会うことはないわ」
「そんな……ナミが悲しんで、クライングよ。フレンドだったじゃない?」
「脅迫の次は泣き落とし? ……私を友人として迎えてくれたことは感謝するわ。でも、任務は任務……ごめんなさい」
 ツ、とカーラが前に出る。
「こっちもソーリー! うぉおりゃー」
 正眼から振り上げたレイクのバットがブン、と唸る。
「遅い!」
 さっと横に飛んだカーラの後ろ蹴りが、レイクの手首にヒットした。
「アウチぃ!」
 カランカラン、と、バットがレイクの手からこぼれる。
「レイク、ごめんなさい……」
 カーラはそう言ってとどめを刺すべく、レイクの背後に回りこんだ。
「あ……れぇ、二人とも、何やってるの? それに卵」
 ぎょっとしてカーラが手を止め、声のする方を見た。
 懐中電灯片手のナミと、パジャマ姿のハルミだ。
「あ、あなたこそ」
「聞こえなかったの、警報よ。ジャシールが浜辺に現れたんだって!」
「ジャシール? そ、そうなのよ、だから先に来て、卵を安全な場所に」
 と、カーラがレイクに目配せをする。
「わ、私はほら、今度基地である野球大会の練習ね」
 と、バットを拾い上げ、見せた。
「卵はロクヒト君の中が安全だって言ってなかった?」
「で、でも、割れると困るし、ねえ」
「そ、そう、ブレイクしたらねえ」
 取り繕うように、カーラとレイクは顔を見合わせ、不自然な笑顔を見せた。
「そっか……でも、こんなところに転がせて置く方が危ないよ、さあ、みんな乗って!」
 その頃……浜辺では国連軍とジャシールの必死の攻防戦の真っ最中だった。
 サーチライトが照らす中、黒い一群が上陸しようとしている。
「撃て撃て! クソ、こんな奴らを夜食にありつかせるなよ!」
 チャールズの檄の下、小銃が唸りを上げるが、ジャシールは圧倒的な数で押し寄せてくる。

その進行を防ぐように、三脚に据えられた多銃身の7・62ミリ口径M134回転式機関銃、通称ミニガンがずらりと並び、それをサポートするように小銃で武装した歩兵たちが構えていた。


----つづく----

プテリギオンに次ぐ新たなる人類の敵「ジャシール」
 ついにミサキ町攻防戦の幕が切って落とされる!

人類、ジャシール、生き残るのはどちらだ!
「バカと戦車で守ってみる!」

第5話「海辺の戦車、もう一台(後編)」

ナミ  :さあ、行くわよ!パンツァ~ふぉkmvyfだdsんfぃふじこ
 ハルミ:駄目です~別の作品になっちゃいます~
 カーラ:別に、ただのドイツ語の掛け声よ、それ
 レイク:どうでもいいから、早くチャージするです><
 ハルミ:チャージ?充電??ああ、突撃の方のチャージですね


 ナミ :それにしても、あの卵、なんの卵なんだろう?

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